分析哲学と文化をつなぐ哲学雑誌、『フィルカル Vol.8 No.1』p97に『柔術上達論』のレビューが掲載されました。
著者の渡辺一樹さんから許可をいただきましたので、こちらにも掲載させていただきます。
以下レビュー
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柔術の教則本なのだが、類書とは決定的に異なっている。
格闘技の教則本は、たいてい、テクニックの羅列に終始するので、技術を見せしめることが主要な部分を占める。しかし、これは哲学的議論の結論だけを教示するようなもので、そこに至る理路やモチベーションといった要素は隠蔽される。
また、格闘技の技術は常に相手に合わせたものであるという「文脈」が重要であるのに、標準的な教則本にはこれが欠けている。
この本は、達人芸の教示ではなく、プロがどのような理路、動機、文脈のもとで実戦に臨んでいるのか、開示する。
かくて実戦の全体構造を示してしまう。
入門書の目的は、それを読んだものが実戦にのぞむことにある。
つまり、入門書はチュートリアル的なものであって、マニュアル的なものではない。
実戦に関しての武器は、己の体躯と思考であって、書物ではない。
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レビュー以上
いやー、嬉しいですね。僕が工学部卒業だからか、
「あの人は理系だから、ああいう説明をする」的なことを言われることが多いのですが、
文系・理系関係ないですよ。
大事なのは
「説明の内容が事実に基づいているかどうか、また話の流れが論理的であるかどうか」
だと僕は思っています。
なので、この書籍『上達論』に関しては「哲学的、心理学的な内容ですね」と言われることもあるのですが、
哲学の専門家からこのような評価をいただけた、というのは望外の喜びです。
言語に例えると、柔術はまだまだ「話し言葉」しか存在せず、
「書き言葉」は現れていない、と僕は考えています。
単語や定型文などのようなものはあるけれど、それらは雰囲気によって伝えられているだけで、
まだ「文法」は確立されていないのではないでしょうか。
これからも工夫をこらして、
”寝技における文法”の構築の一助になる働きをしていきたいと考えています。
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